グランピングについて考える。
BBQ&Co代表の成田です。
僕たちは「日本にバーベキュー文化を広めたい」という想いで、バーベキュー場を運営し、新
しいBBQメニューやスパイスを開発し、地元生産者の方々と語り合い、いっそBBQ場から作
っちゃえ! と公園や公共空間の開発にも携わっています。
つまり僕たちのBBQはキャンプに限定される文化ではないのですが、僕たちが実践している
BBQに親和性を感じて、グランピング側から声を掛けていただくことがよくあります。
今回は「グランピング」について僕が感じていることをお話しします。
BBQ≠キャンプめし
バーベキューと聞くと「キャンプめし」を連想する人がまだまだ多い日本ですが、BBQとキャンプは出自から別物です。
▼BBQとキャンプ、別物だってよ?!
BBQは普段の暮らしが屋外に出たもので、キャンプ(≒キャンプめし)は山や屋外からキッチンに近づいてきたもの。そこを見誤ったままでは、BBQの本質ともいえる「コミュニケーション」にはなかなかたどり着けません。
ではグランピングは?
そもそもグランピングって何者だと思いますか?
海外のグランピングとは?
海外で生まれたグランピングは「グラマラスな体験」にフォーカスしていました。それは自然環境に没入し非日常を得られる贅沢な体験を意味しています。目の前に広がる自然をいかに全身で体感するかという点が追求されていて、そこには、僕らがBBQを通じて生み出そうとしている「ハレ」と「ケ」の行き来とも通じる指向性があるように感じます。
2010年代、日本にグランピングが入ってきました。そして日本向けにローカライズされて流行り始めました。
日本におけるグランピングは「少しおしゃれなキャンプ」。少しお金をかけて快適にキャンプっぽいことをする、という考え方です。つまり借景や自然体験ではなく施設が少しグラマラスです。
本来、グランピングとキャンプは別物だったはずで、グランピングはリッツカールトンが狙う層と同じような、ハイエンドな宿泊体験の選択肢のひとつとして、海外で生まれた概念でした。ですが、このグランピングという概念は日本における展開の中で、既存のキャンプ(カルチャーやマーケット)に相乗りすることになりました。これまでとは違ったキャンプ泊をマーケットに訴求するにあたって、イニシャルコストを抑えられるのではないかという事業者側の思惑があったのだろうと思います。コロナ以降にマイクロツーリズム需要が膨らんでいった機運を捉え、効果的にプロモーションができるというビジネス面が優先されたわけです。
そして日本では、グランピングは「少しおしゃれなキャンプ」を意味する記号として、ものすごいスピードで流通していきました。
定型化した日本版グランピング
日本人がグランピングと聞いて思い浮かべるイメージは、おそらくみんな同じではないでしょうか?
・広くて大きなドーム型テント
・エアコンなどの暖房器具完備
・ホテルの部屋にあるようなベッドやソファ
・準備も片付けも不要なバーベキュー
日本のグランピング場は自然環境をそこまで強く打ち出していません。少なくとも事業者側は、グラマラスな自然環境を第一には追求していないところが多いです。そして「グランピングしたい」と考える人は、流行りものに触れてみたいというのが動機であるように感じます。
しかし、海外のグランピングは意味合いが違います。最上級の宿泊体験として、海や山や湖といった自然景観とより深く一体化したい、没入感を味わいたい、という思いが強いときに、選択肢としてグランピングが出てくるのです。
言葉が共通のイメージを生みだす
と、いうように、グラピングは日本で独自に再編されました。
しかしここでは、日本と海外のグランピングの違いを評価するのではなく、日本人の多くが共有できている「グランピング」という言葉の強さについて考えます。
・グランピングはおしゃれ
・グランピングは映える
・グランピングは清潔なキャンプ
・グランピングは小さな子ども連れでも無理なくできる
日本でグランピングと言うとき、みんなが共通のイメージを持つことができます。
事業者も、利用者も、行政も、融資する金融機関も、同じ文脈で話ができます。つまり、グランピングは言葉として市民権を得ているといえます。
日本版グランピングについては、正直なところ僕の価値観とは違うところもありますが、このグランピングという「言葉の一般化」は羨ましくもあります。
目指すは「コネクトしよう!」
というのも、僕らBBQ&Coが継続的に取り組んでいる「Connect BBQ(コネクトバー
ベキュー)」。
Connect BBQは、その表面だけを見れば、BBQを通じて僕らと地域の生産者とお客様
をつなげるイベントです。でも、僕らがConnect BBQに込めている想いはもっと複雑
です。
今の時代、日常生活でも分業化が進んでいて、買い物はお金と物・情報の交換でしか
なくなってきています。「誰から買うか」や「生産者はどんな人か」というものづく
りの背景には関心がなく、クオリティと金額だけに注目した買い物になりがちです。
その瞬間瞬間の損得勘定だけを積み重ねて生きているといっても過言ではありません
。
もし物流が途絶えて、自分の衣食住を自分で世話しないといけなくなったら?
多くの人が一次生産者ではないので、すぐに生活に困ってしまいます。
でも、もし日頃の買い物を通じて、生産者さんとのつながりを持っていたら?
とはいえ、普段大型スーパーやネットだけで買い物をしている人が、急に生産者と出
会おうとしてもどうしていいかわかりません。昔の八百屋さんや三河屋さんのように
、普段からの付き合いの中で買い物する文化は、今の日本ではほぼ廃れてしまってい
ます。でも、この継続的なお付き合いこそが、私たちが生きていく上で大事だと実感
します。
人生は単に「今」が連続しているわけではありません。
ライフステージが移るごとに、いやもっと日常的に、小さな変化が連続して起きてい
ます。変化の中には自分ひとりだけでは乗り越えられないものもあります。人と人の
つながりや、仲間という財産に助けられて、自分が生きていく上での変化や変容を起
こしていくものです。
だから僕らは、普段出会わない人とつながっていける機会を提供する場として
Connect BBQを行っています。しかも継続的にいろいろな場所で。なぜならConnect
BBQは単発イベントでは意味がないからです。BBQコミュニケーションを通じて、参
加した人たちの人生が変わっていく取り組みでありたいと考えています。
つまり……Connect BBQは、ひとことで説明するのが難しいプロジェクトです。
その点、グランピングは「できあがっている」ので、イメージの共有がしやすくて羨
ましく思います。
そういう意味で、Connect BBQは伸びしろが大きい取り組みです。生産者さんやお客
様と一緒に体験しながら、BBQコミュニケーションを通じて「コネクトってこういう
コト」というイメージを作り上げていきたいと考え、BBQ&COではConnect BBQ継続
的に開催しています。
「コネクトしようよ!」で通じる日を目指して。
▼Connect BBQ本格始動!