BBQ&Coがオリジナルプロダクトを作る理由。
BBQ&Co代表の成田です。
僕らはBBQや料理に関するオリジナルプロダクトの開発も行っています。
BBQに新たな発見と楽しみを生み出すブレンデッドスパイスや、KOBE WESTの近隣農家で栽培されている地場野菜で作ったピクルスをはじめ、さまざまなプロダクトを企画開発し、BBQ&Coのオンラインストアでも紹介・販売しています。
行政から見放されていた土地の魅力を引き出し新たな光をあてていく「開発」の取り組みでは、「地の利」のひとつといえる伝統工芸や地域産業、その土地で育てられた食材にも注目しています。
土地の魅力に注目し価値を再構築するプロセスは開発には欠かせません。
この過程なしには、意義のあるプロダクトは生み出せないと考えているからです。
■BBQ&Co Shopping 公式オンラインストア
■Dr.BBQ オリジナルスパイス
■KOBE WEST PICKLES
僕らが考えるプロダクト開発とは。
20代前半の僕は、少し古臭いデザインの服を着て遊びに出かけていくのが好きでした。
その服は、亡くなった祖父のおさがりとして貰ったものです。その姿で登場すると、みんなたいてい「なにそれ?」と訊いてくれます。その質問をきっかけに、祖父のことや自分のルーツについて話すことができ、「素敵だね」「面白いおじいちゃんだね」と話が盛り上がるのがとても好きでした。
僕はルーツや地元へのコミットメントが人一倍強いのかもしれません。
でも、この「おさがりの服」のように、モノの背景には大きな魅力が秘められていることが多くあります。
BBQ&CoではBBQにまつわるオリジナルプロダクトを企画・開発していますが、こういった、モノが担う「ストーリー」に注目し新たな光を当てる取り組みをしています。
伝統工芸は土地が紡いできた力。
自分のことばかりで恐縮ですが、僕はジャケットの襟元にキラキラと光るピンバッチを付けています。
見た通りのSDGsのバッジです。
でも少し変わっているのは、素材が螺鈿(らでん)ということです。
螺鈿細工とは、貝殻の内側の光沢面を磨き上げて虹色に輝く飾りを作る、日本の伝統工芸です。富山県高岡市に伝わる職人の技です。このバッジも高岡青年会議所が企画したプロダクトです。
SDGsを表現するなら、素材は何でもよくて、17の目標を表す色彩があれば、「付けている人がSDGsを意識しているとわかる」という機能を満たしますよね。
でも、僕は、プロダクトは機能的なだけでいいのかと思うんです。
SDGsを表している上に、高岡の伝統工芸「螺鈿」の魅力に賛同し、自分でも発信することができる。このプロダクトにはその背景が込められています。
そこに惹かれて僕は螺鈿細工のバッジを選びました。
例えば、もし海外マーケットで活躍するビジネスマンが、西陣織の着物を羽織ってレセプションに登場したら、
「日本を背負う覚悟で商談する気だ」
取引先の見方が変わると思いませんか?
僕が今着ているジャケットの裏地は兵庫県の播州織で……ということはないですが(笑)、プロダクトを通じて地域の魅力を実感し、土地の力を感じながら生きることができると思うんです。
プロダクトのストーリーに向き合う。
プロダクトの価値を再構築するとは、「私たちは、このプロダクトが脈々とつなげてきた文脈を尊重している」とはっきりと表明することです。そのためには、プロダクトの背景を理解することが必要です。
「海外で○○というのが流行っています」
「オシャレで面白いですね!」
「ウチもそれを真似して作ろう」
というのは、価値の表層だけを借りてくるスタイルで、そこには再構築の意義も覚悟もありません。僕はこういう安直な考えはグローバリズムの弊害だと思うし好きになれません。
海外製のBBQプロダクトは見た目はかっこいいのですが、規格が大きすぎて日本人には扱いにくかったり、そもそもどう使ったらいいかの理解が浸透していないことがよくあります。
海外の文化をそのまま日本に移植するのではなく、日本人や日本の文化にアジャストする必要があります。
少し話は逸れますが、先日ブラジル人の和牛マイスターの方と一緒にBBQをする機会がありました。
彼は持参したブラジル家庭の愛用品だという焼き網を、備長炭を起こした日本製の七輪の上に乗せて肉を焼いてくれました。僕は、「網とコンロは一体的に開発していなくてもいいんだ。こんなハイブリッドな可能性もあるんだ!」と感動しました。
再構築とは覚悟だ。
日本の伝統工芸には、たいてい深いストーリーがあります。
人々が、何かしらの想いを叶えようとして、あるいは何かに役立てようと考えて、そのプロダクトを生み出した背景があるのに、いつのまにか機能性や効率を重視する風潮の中で端に追いやられてしまい、職人の後継者問題などで産業自体が衰退しつつある文化もあります。
伝統工芸品は、その文脈に立つ未来の人が愛用することで、その意義が肯定されるんじゃないかと思います。地元の若い人からは忘れ去られて、そっぽを向かれていたとしても、機能主義ではないところで光をあて、再び地元の誇りとなるようなサポートがしたい。
僕たちBBQ&Coは、プロダクトの背景にあるストーリーに注目し、その土地でBBQを行う意義と結びつけています。BBQ場の開発と並行してその土地由来の伝統工芸や地場産業に光を当て、プロダクトとして再構築するという、覚悟で取り組んでいます。
「地の利」に光をあてる。
とはいえ、現在のプラットフォームで伝統工芸を再構築するには難しい面もあります。
例えば螺鈿は、昔は寺社仏閣で極楽浄土を表現するために用いられた豪華絢爛な細工でした。今では豪華絢爛な装飾を施す場が少なくなったため、昔のような活躍が難しい技術です。でも、昔のままのスタイルで現在に移植するのではなく、素晴らしい技術をどう残したらいいかを考えて、新たなプロダクトとして再構築するという取り組みに意義があると僕は考えます。
兵庫県でいえば、三木の刃物、播州織、神戸西区の野菜、明石のたこ、丹波の木工など、この土地に根差した魅力的なストーリーの数々があふれています。
そんな「地の利」に光をあてて、その土地の文脈にある文化を開発していくことこそが、僕らがやりたいプロダクト開発だと考えています。
これからも、日本各地で、その土地の魅力を紡いできた素晴らしい伝統工芸や食材の数々に出会えたらと思っています。