大蔵海岸に賑わいを取り戻すまで。
BBQ&Co(バーベキューアンドコー)の代表・成田です。
僕らはBBQ場の運営専門会社みたいに見えているかもしれないけど、実は全然違います。
BBQ&Coが「やってきたこと」と「やろうとしていること」について、自己紹介を兼ねて少しお話しします。
12年前のこと。
僕は誰もいない大蔵海岸で、化石みたいなBBQ炉と向き合っていました。
見離されていた大蔵海岸。
明石市民なら幾度となく行った大蔵海岸。
僕にとっても若い頃から思い入れのある場所で、よく1人で来てはボーッと海を眺めて過ごしていました。
ここはとにかく絶景。地元民の贔屓目抜きにしても素晴らしい景色が広がっています。
目の前には世界最長の吊り橋・明石海峡大橋。
世界中の絶景を知る貿易商トーマス・クックが「エーゲ海よりも美しい」と評した瀬戸内海。
潮風、波間に輝く陽光。昼は淡路島を望み、夜にはライトアップされて表情を変える大橋。もちろん朝も夕暮れも素晴らしい。海水浴客で賑わう開放的な海も、静かな冬の海もまたいい。
でも、その何ものにも替えがたい価値にすら地元の人は鈍感になっていました。当たり前過ぎて見向きもされず、さらに悲しい事故が起きてからはその名前を出すことすらためらうようになっていました。
いつしか大蔵海岸は、過去に取り残された場所になっていました。
絶景はたいてい行政の管理下にある。
昔も今も美しい風景を持つ大蔵海岸ですが、そのポテンシャルを生かしきれていたかというと明らかに「NO」でしょう。それが行政所有地の難しいところです。
大蔵海岸一帯は明石市が所有しており、その中に公設のBBQ場がありました。2008年、運営面で悩みを抱えた明石市がプロポーザルで業務委託先を公募し、BBQ&Coが受注して運営することになりました。
当時の大蔵海岸BBQ場は、だだっ広い場所に四角い炉があるだけの無愛想なものでした。昔、自然学校で飯盒炊飯体験をしたときのような、地面にブロックなどでコの字型の囲いを組んだだけの状態です。照明も整備されていなかったので、暗くなると懐中電灯で照らしながら肉を焼いていました。
今でこそ「まさか!」「話盛ってない?」と思われるかもしれませんが、本当にそんな地平から大蔵海岸BBQ場の再生計画は始まったんです。
寂れた海岸に賑わいを呼び戻すために。
この海岸の魅力を体感できる施設にしたい。少しずつ手を入れていけば、必ずこの場所の風向きも変わる。寂れて何もないところだけど、そんな直感だけが当時の大蔵海岸にはありました。
この場所に投資して居心地を整えていかないといけない。
僕たちは明石市に、「もっと家賃を払うからテントを付けてください」「夜の照明をつけてください」と持ちかけて、少しずつ整備を進めていきました。
「え、こんなに魅力的なところだったの!」
と、そこを訪れる人たちにも、そこを管理してきた地元の方々にも体感してもらえるような場所にしたいと思いました。
そして、僕らの海は「ZAZAZA」になった。
場づくりを進めていく中で、そこで楽しむBBQについても勉強しました。
BBQ先進国と言われていたオーストラリアに視察に行って、日本のキャンプ場でやっているのは「屋外焼肉」だと打ちひしがれたり(BBQ先進国で見た驚きのBBQについては今度別の記事で紹介しますね) 、BBQとはコミュニケーションツールだと気付かされたり(これも面白い話なのでまた別の記事で!) 、そんな体験を重ねながら肉や炎と葛藤しているうちに、すっかり僕たちは「BBQの人」になっていきました。
閑散としていた大蔵海岸にBBQというコミュニケーションツールを持ち込んで、場所が持つ魅力を最大限に引き出し、再び人が集まる雰囲気を生み、賑わいを作り出したい。
いわば、僕たちはBBQ場そのものを作りたかったわけではなく、「BBQ&Co」の「Co(Cooperation)」の方が真意でした。
明石市との契約は、最初は1年契約だったので大きな投資は難しかったのですが、実績を認めていただけたのか、徐々に契約年数が延びていき、ついに10年(最長30年)という新たな形の契約を結べたので、2019年に大々的なリニューアルをして、現在の「大蔵海岸BBQ ZAZAZA」
に生まれ変わりました。
大蔵海岸BBQ
誰もが知っている場所の、誰も知らない表情を引き出す。
大蔵海岸は、歩道橋や砂浜での事故により、地元民にとってネガティブなイメージの場所だったのは事実です。2008年に相談を持ちかけられた当時、明石市は本当に困っていました。しかも行政所有地の公園は管理のルールも独特で制約が多いので、一般的なビジネスモデルを展開しにくいところがあります。
だからこそ「なんとかしたい」と乗り出しました。
そして夢中で突っ走ってきた結果、「ZAZAZA」
に多くの人たちが遊びにきてくれるようになり、2022年の「第41回全国豊かな海づくり大会 兵庫大会」関連セレモニーでこの海岸に天皇・皇后両陛下が訪れて稚魚を放流されるというところまで巻き返しました。
誰もが知っている場所の、誰ひとり知らなかった魅力を、BBQを使って引き出していく。
日本の至るところにある数多の「大蔵海岸」に賑わいを。
それが、BBQ&Coが「やってきたこと」であり「やろうとしていること」なんです。