人を動かすパークマネジメントとは?
BBQ&Co代表の成田です。
パークマネジメントを進めるにあたって、大事なことは何だと思いますか?
十分な予算?
何より大切なのは人と人との「対話」です。地域に根ざした公園開発は、一朝一夕に進むものではありません。地道に対話を重ねていくことで、少しずつこれまでの慣例を超えた道が切り開けるようになります。
まず「公園は利用者のもの」という考えを行政の方々と共有すること。そしてともにその理想に向かって状況を変えていくという段階を踏むことが大切だと、僕らは考えています。
公園づくりの決め手とは?
BBQ&Coは、兵庫県の大蔵海岸や明石公園のように、行政所有地である海岸や公園に新しい価値を加える「開発」を多く手掛けてきました。依頼を受けると僕らは必ずその土地に何度も通い、その土地の方々と話し合いを重ねて、プロジェクトを進めていきます。
行政組織の中で、今までやっていなかったことにチャレンジするのは容易ではないことは僕たちも理解しています。何事も既存の文脈を踏襲して進めていくのがスムーズだろうと思います。
でも公園は管理する側の事情に合わせて開発するものではなく、利用する人々を想像して、ときに慣例に縛られず、今の時代に合った場づくりをすることも大切です。
とはいえ、行政側にとって僕らの想いやアイデアは、外部の視点でありすぐに受け入れていただくのは難しいケースも多いです。
だから公園開発の最初のフェーズは、自治体の方に、僕らがやろうとしていることを知っていただき、一緒の地平で考えていくための土台をつくることから始まります。人と人ですから、やはり対話が大切です。
そのひとつとして、自治体の方々とのワークショップや意見交換の場づくりを僕らは大切にしています。
研究員の方々の視点を知る。
自治体の方々と公園開発について一緒に勉強していく中で、博物館の学芸員や研究員の方と対話する機会が時々あります。ワークショップのファシリテーターをしていただいたりすると、専門家だからこその着眼点や意見には発見があり、そしてチャレンジングな結論に導いてくれることもあって、いつも有意義な学びがあります。
また、県や市町村の博物館で研究されている方々は行政内の立場にあるので、行政側としても意見を取り入れやすく、自治体の職員をワークショップの場に引き込むことにもつながりやすいので、僕らはとても頼りにしています。
そして何より、研究に没頭しエビデンスを追究している方々は専門知識や経験が豊富なので、お話しするたびにいつも新たな発見があり刺激的です。
「TTTはカフェではない」
兵庫県三田市に「人と自然の博物館」という施設があります。
人と自然のあり方、里山や公園を持続可能な形としてどう伝えていけばいいかを科学的に考えている兵庫県立の博物館です。館長の中瀬勲さんは、人と自然の共生やまちづくりに関する造詣が深い方で、兵庫県知事も一目置いている研究者です。
以前、この博物館の研究員・藤本真里さんが、明石公園TTTを取材してくださったことがあります。そして、複数の研究者との共著『パークマネジメントがひらくまちづくりの未来』(マルモ出版 2020年)という本の中で、「地域コミュニティとパークマネジメント」という章で、僕がお話ししたことを紹介してくださっています。
「僕たちは、自分たちのことはカフェとは言いません」
僕たちBBQ&Coが明石公園の開発で目指しているのは、公園に拡散するにぎわいの核を作り出していくことです。そのコンセプトのもとでTTTを運営しているのであって、「公園の中にあるいい感じのカフェ」をやりたいわけではないということ。
つまり、TTTが核となって、よりよい場づくりを担う人々を集め、応援する存在であるべきだと考えています。
そのアイデアやビジョンについて文章としてまとめていただき、藤本さんの考察が加えられてアウトプットされています。こういった1つひとつが行政を動かす説得材料になっていくと実感しています。
■Food&Drinks TTT
対話を重ねて理解を深める。
公園開発は、結局は人と人の共同作業なので、いくら地域に対して同じ志を持っていたとしても、膝を突き合わせて対話していかないと互いに近づくことはできません。
僕自身、兵庫県の職員向けや民間向けのワークショップに講師として呼んでいただき、お話をしたことも何度かあります。兵庫県においては、少しずつですが、行政―民間という立場の違いを超えた関係の構築ができつつあるのではないかと感じています。
そして、先ほど紹介した、
「TTTが核となって、よりよい場づくりを担う人々を集め、応援する存在であるべきだと考えています」
ということについて、最後にもう少し詳しくご紹介します。
明石公園をアウトリビング化したい。
明石公園はまだまだ良くしていく余地が多くあります。
いわば進化の途中ではありますが、兵庫県と随分と対話・議論を重ねてきた甲斐あって、僕らと行政とが一緒の視点で利用者のことを見て「地域が求める公園のあり方」を考えるフェーズへと歩を進めているように感じます。
明石公園は、日常生活の舞台です。
それをふまえて、僕らはTTTを通じて、地域に暮らす人々の暮らしを公園という舞台で展開するプロジェクトを企画しています。
具体的には、手芸やものづくりの作家さんが出店する小さなマルシェイベントや、料理、フラワーアレンジメント、ハーバリウムなどのワークショップなどを定期的に開催して、TTTを介して暮らしのあり方を情報発信することで、暮らしと公園がシームレスにつながる「アウトドアリビング化」を狙った運営を始めています。
TTTが「公園に拡散するにぎわいの核」としてのあり方を目指して、今後僕らがどんなイベントを打ち出していくかご期待ください。
■Food&Drinks TTT